初期研修インタビュー

2024-01-10

筑後市立病院(福岡県) 初期研修医 渕上孝一先生 (2024年)

筑後市立病院(福岡県)の初期研修医、渕上孝一先生に、病院の特徴や研修プログラムについてなど、様々なエピソードをお伺いしました。この内容は2023年に収録したものです。

筑後市立病院

〒833-0041
福岡県筑後市大字和泉917-1
TEL:0942-53-7511
FAX:0942-53-7515
病院URL:https://www.chikugocity-hp.jp/

渕上先生の近影

名前 渕上(フチガミ) 孝一(コウイチ)
出身地・出身大学 / 医師免許取得年度 佐賀県佐賀市・九州大学 / 2022年

医師を目指したきっかけをお聞かせください。

 私は経済学部を卒業後、不動産関係の企業に就職し、横浜で働いていたときに東日本大震災に遭遇し、そこでCPAの方の対応をすることになったんです。
自信がないままに胸骨圧迫ぐらいはしたのですが、結局、その方は亡くなってしまいました。そこで何も知識がないことに気づいて、何かできることがあったのではないか、きちんと勉強してみたいと思ったのがきっかけです。それから細々と仕事をしながら、4年かかって医学部に入学しました。

学生生活ではどんなことが思い出に残っていますか。

 28歳で入学したので、現役で合格した同級生とは10歳違いますから、ジェネレーションギャップがありました(笑)。
私が最初に通っていた大学はわいわい遊ぶタイプの大学でしたが、10歳下の人たちはカラオケに行くぐらいで、お酒も飲まないんですよ。
私は以前の大学でラグビー部に入っていたので、九州大学でもラグビー部に入ってみたら、高校の後輩が多く、研修医まで私に敬語を使ってくるので申し訳なくなり、西医体に1回出たあとで、縛りの緩い柔道部に移りました(笑)。

大学卒業後、研修先を筑後市立病院に決めた理由をお聞かせください。

 柔道部のOBでいらした中野昌彦先生が副院長をされていたこともあり、見学に来たのがきっかけです。
当院だけでなく、久留米大学病院、公立八女総合病院、大牟田市立病院などでの研修も選べること、ほかの病院よりも初期研修医の裁量権が圧倒的に与えられていると知り、当院に決めました。

見学に来たときの印象はいかがでしたか。

 博多から見学に来たときに、空気が綺麗で驚きました(笑)。
当院はメジャーな臨床研修病院ではないので、「こんなに田舎でいいの」と聞かれたりもしましたが、「はい喜んで。大丈夫です」と答えていました。

筑後市立病院での初期研修はイメージ通りですか。

 「やってみよう」という姿勢でいると、どこまででもさせていただけるので、徐々に負荷が増えていきます。それで、次々に仕事をしないといけなくなると大変だなと思うこともありますが勉強になります。
一方でこの2年間で、私以外の初期研修医がいないので、自分の立ち位置が分からなくなりこれでいいのかなという不安もあります。1年目の4月から6月ぐらいのカリキュラムを見返すと、この頃は怖かったし、挙動不審のようにやっていたことを思い出します。
その頃に比べると、確かに動けるようになりました。ただ1年目の研修医がおどおどしている姿を見たこともないし、先輩に「今、いい感じ」と言われることもないので、「自分はどこにいるんだろう」という不安の中でずっとやってきたことは確かではあります。

プログラムの特徴はどんな点でしょうか。

 久留米大学病院をはじめ、他院での研修が充実していることに加え、特に整形外科に関しては手術に積極的に関わらせていただけます。
初期研修医が手術に入るとなると、ほかの病院だと基本的には筋鈎を引くことが多いイメージですが、当院は「やってみろ」と執刀させていただけるのが特徴です。外傷であれば「できるなら、やってみろ」と全部いただけるぐらい経験させていただいています。

プログラムの自由度は高いですか。

 必修科が終わっていれば、2年目は何科を選んでもいいので、自由度は非常に高いです。私の1つ上の先輩研修医は久留米大学病院に長く研修に行っていました。

院外での研修先をお聞かせください。

 小児科や産婦人科などは久留米大学病院、公立八女総合病院、大牟田市立病院での研修が選べるほか、精神科は植田病院、地域医療は高良台リハビリテーション病院となっています。

筑後市立病院での初期研修で勉強になっていることはどんなことでしょう。

 診療行為の全てが勉強になっています。普段の仕事としては大きく病棟管理、外来、手術の3つがありますが、それぞれ覚えることが多いです。
見ていると簡単そうですが、実際にやってみると難しいというのが正直な実感です。患者さんが1人であれば問題なくても、2人、3人と増えてくると抜けも出てくるし、大変ですね。

渕上先生の写真

失敗談はありますか。

 最近で言うと、手術鉗子で皮膚を挟んでしまい、怒られました。幸いたいしたことがなく、良かったです。
あとは針刺しなど、手術関連のミスが多いですね。

初期研修にあたって、どのような姿勢を心がけていますか。

 上の先生方にできるだけ迷惑をかけないように仕事ができたらなと思っています。

当直の体制をお聞かせください。

 月に4回あります。内科、外科の指導医の先生が1人ずつ当直されているので、どちらかに入る形です。
まずファーストコールで呼ばれ、身体診察をして、検査を出して、上の先生に「こんな感じですけど、どうですか」とお尋ねして許可をいただきます。
重篤な場合は上の先生も下りてきてくださるのですが、重い症例ばかりあるわけではありません。

当直で勉強になっていることはどのようなことですか。

 夜中だからか、色々な方が来られます。イレギュラーなことに関してはやはり初めてですと、なかなか対処が難しいです。いわゆる教科書に書いていないことへの対応はとても勉強になっています。

指導医の先生のご指導はいかがでしょうか。

 とても丁寧に教えていただいています。先生方が教えてくださる情報量が多いので、その場で言われたことを「はい、分かりました」と言えるほど、理解力が追いついていません。
あとで本などを読んでチェックしたり、「ああ、そういうことだったんだ」と咀嚼したりしています。

カンファレンスの雰囲気はいかがですか。

 内科を6カ月間、回るのですが、内科カンファレンスというカンファレンスが週に1回あり、内科の医師全員が集まって症例発表をします。毎回スライドを作って発表していたのですが、たまたま最初の症例が地方会に出てくるぐらいの珍しいもので、それが3週ぐらい続いたんです。
それで「何かないと出せない」という雰囲気になりました(笑)。内科カンファレンスは「こんな患者さんです。宜しくお願いします」という感じだと聞いていたのですが、期待されてしまうとハードルが上がり、きちんと作らないといけなくなったので、大変です。

コメディカルスタッフの方々とのコミュニケーションはいかがですか。

 皆さん、とても丁寧にしてくださいます。ベテランの方も多く、働きやすいですね。
血液内科は久留米大学病院で研修したのですが、大学の看護師さんとも雰囲気が違っていて、当院は先に空気を読んで動いてくださったり、先回りして動いてくださる方が多くて、助かっています。

病院に改善を望みたいことはありますか。

 当直室のベッドをもう少し良くしてほしいです(笑)。古くなってきて、マットがぺらぺらになってきました。

同期はいらっしゃらないのですね。

 いません。一人でずっと研修しています。1つ上にはいましたが、1つ下もいません。寂しいも何も最初から誰もいないので、比較の対象もなく、こういうものだと思っています(笑)。研修医室もなく、医局で指導医の先生方と一緒にいます。
たまに研修医の記事などで「上の先生と同じ部屋にいると過ごしづらい」と読んだりしますが、その気持ちも分かりません(笑)。

渕上先生の写真

お住まいは寮ですか。

 寮はなく、自分で借りています。住居手当が高く、家賃の9割ぐらいを出していただいています。
福利厚生がいいのは有り難いですね。病院までは徒歩20分ぐらいかかるのですが、私はHbA1cが高めで、下げないといけないため、歩いて通勤しています(笑)。

今後のご予定をお聞かせください。

 整形外科を専攻し、九州大学の専門研修プログラムに乗る予定です。
柔道部の繋がりだけで全てを決めている感がありますが、整形外科の中島康晴教授が柔道部の部長でいらっしゃるんです。また九州医療センター整形外科の福士純一部長も柔道部のOBでいらっしゃいます。そういうご縁があり、九大に入局することになりました。
今後は整形外科医として、何でも一通り診られるようになり、しっかり手術もできるようになりたいです。そのためには勉強しなくてはと思っています。

ご趣味など、プライベートの過ごし方について教えてください。

 最近は上の先生方とよく釣りに行っています。釣りを始めたのは今年に入ってからですが、楽しいですね。
先日は長崎県の平戸沖に行ってきました。釣った魚は家に持ち帰って、捌いて食べています。捌き方はYou Tubeを見ながら覚えました。今後は船舶免許を取り、海と闘っていきたいと思っています笑)。

現在の臨床研修制度についてのご意見をお願いします。

 私自身はきつい思い出もなく、とても面白かったです。追い込まれた経験が足りなかったからか、臨床をする中で判断に困るときには勉強ができていないのではないかと不安になることもあるぐらいです。
もう少し負荷がかかっても良かったのかもしれませんが、そのうち負荷もかかるはずなので、整形外科で頑張っていきたいです。

【動画】渕上先生

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