2020-04-30
芳賀赤十字病院
全国の赤十字病院の中から、栃木県の芳賀赤十字病院にお伺いしました。研修のプログラム、1日のスケジュールなど、現場の声が聞けるインタビューです。
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齋藤 真理先生プロフィール
- 1999年
- 旭川医科大学 卒業
- 1999年
- 自治医科大学附属病院小児科 研修医
- 2004年
- 自治医科大学附属病院小児科病院 助教就任
- 2006年
- 自治医科大学大学院 入学
- 2010年
- 自治医科大学大学院 修了
- 2010年
- 芳賀赤十字病院小児科 勤務
- 2011年
- 自治医科大学小児科病院 講師就任
- 2013年
- 渡米
- 2014年
- 芳賀赤十字病院小児科 勤務
- 2017年
- 芳賀赤十字病院 第三小児科部長就任
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加盟学会・専門分野
- 日本小児科学会小児科専門医
- 日本小児科学会認定小児科指導医
- 日本超音波医学会専門医
- 日本アレルギー学会アレルギー専門医
- 日本アレルギー学会アレルギー指導医
- 厚生労働省認定臨床研修指導医講習会修了
- 日本感染症学会専門医
- 日本周産期・新生児医学会
新生児蘇生法「専門」コース修了
現在までの齋藤先生
国際弁護士志望から医学部へ
高校2年生から3年生にかけてアメリカのデトロイトに交換留学に行ったんです。それで帰国してきた頃は英語を使える国際弁護士になりたいなと思っていました。
ところが、文系、理系と分かれるにあたって、文系科目がそこまで得意ではなかったんです(笑)。それで進路指導の先生と話をしているうちに、先生から「理系の方が向いているかな。医学部なんて面白いんじゃない」と勧められたのがきっかけです。
もともと生き物が好きだったので、振り返れば色々と引っかかることはあった気がします。
小児科を専攻した理由ですが、当時はストレートな入局でしたので、ゆっくり考える余裕がなく、実習中に色々な診療科を回りながら決めたという感じです。
個人的には整形外科に興味があったし、循環器内科にも惹かれるものがあって、整形外科、循環器内科、小児科で迷っていました。最終的には全身を診られる小児科にしました。
小児科医としてのスタート
6年生の夏休みに自治医大の見学に来たのですが、小児科で桃井眞里子教授にお会いしたんです。その頃は女性の教授は珍しかったですし、そういう上司のもとで働いたらどうなるのかなという期待もあって、入局しました。
自治医大は私の地元の大学ですし、出身大学に隔たりがありません。
今、芳賀赤十字病院での私の上司は菊池豊先生なんです。菊池先生は第一小児科の部長であり、芳賀赤十字病院の院長補佐も務めていらっしゃるのですが、実は私が自治医大で研修医だったときの指導医の先生だったんです(笑)。
菊池先生が芳賀赤十字病院で部長として活躍されていることは伺っていたのですが、まさかこういう巡り合わせで、また自分が部下になって働くとは思ってもいませんでした。全くの偶然ですし、驚きましたね。
芳賀赤十字病院は私にちょうどいい
芳賀赤十字病院へ2010年に来たときは医局人事です。それから夫の研究の都合でアメリカのロサンゼルスに行くことになり、私も一旦退職しました。
私が高校時代に行ったのはデトロイトでしたので、雪ばかりの寒いところだったんです。ロサンゼルスは毎日が晴れていて暖かいところでしたので、ギャップが面白かったです(笑)。
それで帰国してから、芳賀赤十字病院に戻ってきました。
私としては、大学病院並みとはいかなくても、小児科のある程度の診療技術を保ちたいという希望があって、当院は新生児も扱っていますし、小児科の中でも特殊な部分がありますので、診療内容が幅広いです。二次救急病院でもありますから、私にはちょうどいい医療レベルの病院です。
アレルギー専門医を志した理由
入局した頃は小児循環器を勉強していたのですが、大学院ではたまたま自治医大の小児科に神経を専門にしていらっしゃる先生方が多かったので、私も神経疾患の遺伝子の勉強などもしていたんです。その頃に私自身が花粉症になり、アレルギーは大変だと思いました。
医師をしていて、子どもがいるとなると、お母さんたちから話を聞くことがやはり多くなって、アレルギー疾患の話などがよくありました。私としても自分が花粉症になったことで、この分野の勉強が必要だと思い、関心が向いていったんです。
大学院を修了して当院に来たときに、菊池部長にアレルギーに非常に関心があるという話をさせていただいたところ、この地域ではまだ確立されたアレルギー診療がないと伺ったんです。栃木県にはとちぎ子ども医療センターが2つあり、それぞれ自治医科大学附属病院と獨協医科大学病院に併設されているのですが、獨協医科大学病院がアレルギーの研修施設なので、週に1回、勉強に行かせていただくことになりました。
研修を受けながら講習会も受けることで、日本アレルギー学会の専門医を取る資格を得たので、専門医試験を受験しました。
現在の勤務内容
外来・病棟・アレルギー専門医と多方面で活躍中
外来
自治医大から年に2人ぐらいの後期研修医が来るんです。当院を希望して来てくれる人が多いので、魅力のある研修施設になっているのかなと思います。
当院の小児科は新生児から15歳まで全て診られますし、日常診療だけでなく、二次救急も診られます。大学病院の小さい版のような病院なので、外来も入院患者さんも診られますし、上下関係というほどの人数も多くないので、それぞれが発言し、仲間になって参加できるところが魅力のようです。
病棟
小児科の病棟医長をしています。また、新生児の集中治療室であるNICUの病棟医長もしています。NICU(neonatal intensive care unit)は6床、落ち着いた新生児が入るGCU(growing care unit)も6床あります。冬は出産が少ないのですが、春にかけては増えてくるので、季節によって病床の埋まり具合は違います。
アレルギー専門医
2019年から花粉症の免疫療法が5歳以上の子どもに適応になりました。適応のある子どもたちもそうですが、菊池部長のご理解もあって、親御さんや上のご兄弟も一緒に始めたいという方も診ています。
小児科や内科をあちこちまたいで受診するのは患者さんの負担になるので、小児科でご家族も含めて花粉症治療するといったこともしています。
専門医資格があると親御さんからの信頼が違いますね。
また、私たちは学校に赴いて、無料の出張教室のような形で、エピペンという自己注射の指導をする機会が多いのですが、そのときに学校の先生方に「専門医の資格があります」「指導医の資格があります」と伝えると、より難しい質問も来ますし、先生方も積極的に質問に加わってくださるので、やはり資格を取って周囲に示していくことは大切なのだと思います。
論文指導
若い先生方には論文を少なくとも1本書いてほしいと思っています。当院に研修に来ている間にその1本を書けるように指導しています。
齋藤先生の1日のスケジュール
齋藤先生の診療方針
決して手を抜かず、でも無理はしない
「決して手を抜かず、でも無理はしない」ということを心がけています。アレルギーであれば、子どもさんが辛くないように、そして親御さんも大変でないように、患者さん中心でということです。子どもにアトピーがあったり、花粉症があったりすると、季節によって状況が悪くなることがあります。病院では親御さんも明るく振る舞っていらっしゃいますが、家ではきっと泣かれたり、辛いこともあるのだろうと思います。食物アレルギーのお子さんだと、親御さんは毎日、除去されたり、気を遣っていらっしゃいますよね。そういう負担を考えて、なるべく大変にならないような提案をしています。
芳賀赤十字病院とは
働きやすい環境
時短勤務制度が充実しています。また当直室に余裕があるので、妊婦さんだったり、搾乳したい人が使ったり、体調不良時にも利用できることになっています。どの科も上司の理解があるので、休みやすいですね。
小児科には子育て中、妊娠中の医師はいないのですが、産婦人科は出産直後や妊娠中のスタッフが何人もいて、時短勤務制度を利用しています。私自身は大学院に通っている間に出産したので、社会保障がなく、苦労しましたが、当院の制度では社会保障があるので、心配なく働きやすい病院だと思います。
休日が取りやすい
院内保育所はなく、近隣の保育園に預けている人がほとんどです。時短勤務制度を使っている人でも社会保障がきちんとついているのが大きなメリットだと思います。休日も取りやすいですよ。
小児科は常に子どもを扱っているので、同僚や後輩の家族の子どもも気になりますから、休みは取れますし、有給休暇もいただいています。
- 医師として影響や刺激を受けた方はいらっしゃいますか?
- 菊池豊先生です。本当にヒヨコのようについて歩きながら教えていただいた先生です。当時から部下にただ教えるだけではなく、ある程度は自分で考える、という幅を持たせてくれる方でした。今も同じなのですが、あまり縛られることなく、自分なりに考えた、良い仕事できているので、その当時も今もとても助かっています。
- これまでのキャリアの中で、一番印象に残っている出来事はありますか
- 大きな失敗をしたことがあります。
子どもが産まれて仕事に復帰したばかりの頃、私が当直をしていると、子どもの夜泣きが収まらず、家族が見きれないので病院に連れていくと言ってきました。当直では休憩が2時間ほどあるので、「ちょっとだけだったら、会えるかな」と話をして、その時間に待ち合わせをしました。そうしたら、その直前に中耳炎を起こしたお子さんが来たのですが、耳の中は十分な観察ができないので、耳鼻咽喉科の先生に診察を依頼しました。
本来ならば電話で一言お伝えするところなのですが、家族との待ち合わせ時間になっていたので、連絡をせずに、事務の方から伝えていただく形でご紹介してしまったのです。そのあとで「礼儀がなっていない」とお叱りを受けました。確かにその通りで、礼儀がなっていなかったのだと反省しました。
子どもは大事ではありますが、仕事をするからにはメリハリが必要だし、するべきことはきちんと区切りをつけてから仕事を終わらせないといけないことを意識するようになりました。
それ以後は失敗はないのですが、このときは、メリハリをつけることをわかっていたのにできなかった自分がかなり恥ずかしかったです。
- ワーク・ライフ・バランスをどのように実現していらっしゃいますか
- 難しいところですが、できる時にできることをしています。子どもたちが宿題をしている最中に、私も一緒に論文を読んでいたりですね(笑)。
終業前に病棟回診をしますが、できるだけ終業時間18時には病院を出られるようにしています。夫の帰りが遅いので、基本的には時間通りに上がります。個人情報保護の関係で、家に持ち帰れない仕事もありますが、家でできることは家事が一通り終わったところで、その日のうちにしています。時間ぴったりに帰りますが、残した仕事や調べものがありますので。
同じ家にいて、親子の時間を過ごしているから育児をしているのかなと思いきや、していることは仕事だったりもしますが、そういうところをうまく組み合わせて、どうにかお互いの不満が出ないように気をつけています。
- 家事との両立を教えてください
- 私は車通勤をしているのですが、自宅まで40分近くかかります。夕食に間に合うよう、頑張って帰りますが、どうしようもないときは近くに住む私の両親にお願いします。そうした万が一の安全を確保しながら、時間になったら帰宅して家事をします。そして、家事を終えたら残った仕事を家でします。
子どもが生まれる前のように、自分のペースにあわせて、連続して作業する環境ではなくなりましたが、中断しても、すぐに仕事に没頭できる力がつきました。
- 趣味など、プライベートの楽しみについて、お聞かせください
- 趣味は身体を動かすことです。子どもが小さい頃はひたすら散歩したり、公園巡りやピクニックを楽しんでいましたが、今はあまりお金をかけず、ジョギングしたり、走り回ったりしています。近くの公共施設のプールが充実しているので、プールを利用することもありますね。ハイキングやスキーに行くこともあります。
頭を使う職業なので、身体を動かさないとバランスが取れなくなり、いらいらすると思うんです。走って発散ですね(笑)。子どもたちに「運動しなさい」と誘ったりもしていますが、私も高校までは特にスポーツをしていたわけではありません。大学が北海道だったこともあって、そこでようやく競技スキーを始めたぐらいです。そのときに動いていたことが今に繋がっている感じですね。
- 座右の銘はありますか
- そのときどきににいいなと思える言葉はありますが、自分が変わっていくからなのか、「あのときは良い言葉だと思ったけれど、今はちょっと合わなくなった」ということが多いです。
でも、最近、比較的長く続いていることがあります。疲れるとため息をついてしまうときがありますが、子どもに「ため息をつく前に息を吸って」と言われたんです。「何で」と聞き返したら、「息を吸ったら、ため息じゃなくて、深呼吸になるから」と言われ、「そうか、分かった」と納得しました(笑)。それからはため息をつきそうになったら息を吸って、「はい、深呼吸」にしています。子どもからすれば、ため息をついている母親は嫌なんでしょうね。私もそうなりたくないですので、「深呼吸はいいね。リフレッシュできるし」などと言って、深呼吸して次に繋げています。
いっぱいいっぱいになることがどうしてもありますが、その時は気づかなくても、ため息が出そうだと意識することで、いっぱいいっぱいだったのだなと振り返ることもできます。
医学生・若手女子医師にメッセージ
病院アピール
地域に貢献する「寄り添う医療」を目指して
概要
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名称 芳賀赤十字病院 所在地 〒321-4308 栃木県真岡市中郷271 電話番号 0285-82-2195(代) 開設年月 昭和24年7月 院長 安田 是和 休診日 日曜日、毎月第2・第4・第5土曜日
国民の祝日、創立記念日(7月1日)
年末年始(12月29日~1月3日)病床数 一般364床(一般病床360床 感染症病床4床)
診療体制
診療科目
内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、血液内科、神経内科、外科、心臓血管外科、消化器外科、乳腺科、小児外科、整形外科、脳神経外科、形成外科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、救急科、麻酔科、精神科、歯科、歯科口腔外科
診療機能
救急告示病院、病院群輪番救急病院、へき地医療拠点病院、エイズ診察拠点病院、地域周産期母子医療センター、災害拠点病院、栃木県脳卒中地域拠点医療機関、小児救急拠点病院、肝疾患専門医療機関、栃木県DMAT指定医療機関、SPC対象病院、地域医療支援病院、第二種感染症指定医療機関、地域がん診療病院、認知症疾患医療センター、栃木県障害者高次歯科医療機関、臨床研修指定病院
施設認定
- 日本内科学会認定医制度教育関連施設
- 日本消化器内視鏡学会専門医制度専門医指導施設
- 日本消化器病学会認定施設
- 日本透析医学会教育関連施設
- 日本腎臓学会研修施設
- 日本外科学会専門医制度専門医修練施設
- 日本消化器外科学会専門医制度専門医修練施設
- 日本循環器学会専門医研修関連施設
- 日本大腸肛門病学会認定施設
- 日本乳癌学会認定医・専門医制度関連施設
- マンモグラフィ検診精度管理中央委員会マンモグラフィ検診施設
- 日本小児科学会小児科専門医制度研修施設
- 日本小児循環器学会専門医修練施設
- 日本周産期・新生児医学会周産期母体・胎児専門医暫定研修施設
- 日本産婦人科学会専門医制度専攻医指導施設
- 日本麻酔科学会麻酔科認定施設
- 日本整形外科学会専門医制度研修施設
- 日本泌尿器科学会専門医制度専門医教育施設
- 日本救急医学会救急科専門医指定施設
- 日本口腔外科学会専門医制度認定関連研修施設
- 日本小児口腔外科学会認定医制度研修施設
- 日本医学放射線学会専門医修練施設
- 日本感染症学会研修施設
- 日本臨床衛生検査技師会精度保証施設
- 日本がん治療認定医機構認定研修施設
- 日本脳卒中学会認定研修教育病院
- 日本アレルギー学会専門医準教育施設
- 日本眼科学会専門医制度研修施設
- 人間ドッグ健診専門医制度委員会暫定施設