勤務中の秦先生
医師を目指したきっかけをお聞かせください。
秦明確な動機があったわけではなく、人を助けたいという漠然とした思いがあり、医師を目指しました。
病院の特徴はどのようなものでしょうか。
秦松江の医療圏にある唯一の三次救急病院です。地域の中核病院として、救急搬送の患者さんに対し、「断らない」診療をしています。
初期研修で広島市立広島市民病院を選ばれたのはどうしてでしょうか。
秦母が乳がんを患ったことがあり、学生時代に広島市立広島市民病院での乳がんの手術に立ち会わせていただいたことがあって、そうした経験から広島市民病院での初期研修を選びました。広島市民病院は広島にある病院なのですが、広島大学の関連病院というよりは岡山大学の関連病院といった感じなので、母校である広島大学色が薄いんです。色々な大学出身の先生方、医局人事ではなく勤務されている先生方が大勢おられて、活気のある病院だったことが良かったです。
実際に初期研修をなさってみて、いかがでしたか。
秦広島出身の人から、そうではない人まで、色々な大学出身の同期や上下の学年の研修医が集まり、多彩な文化が入り乱れている病院だったので、楽しかったです。ローカルなルールに縛られない活気を感じられた期間でした。
ご専門を選ばれたきっかけについて、お話しください。
秦初期研修を始める前は、女性医師や女性の患者さんが多い小児科や産婦人科、母が手術を受けたことから乳腺外科といった診療科を目指していて、それが広島市民病院を初期研修先に選んだ理由でもあるのですが、初期研修中に「この先生みたいになりたいな」という先生にめぐり会えたんです。救急科の部長でいらっしゃる市場稔久先生で、その先生にお会いしたことで、救急医を志すようになりました。後期研修を麻酔科で行ったのは女性であること、子どもを育てながら働いていくことを考えたら、麻酔科標榜医を持っておいた方がいいのではというアドバイスを市場先生からいただいたからです。麻酔科で全身管理や手技など、救急科の目線だけではない目線を持つためのスキルアップもしたいと思い、後期研修の2年間のみという期限を決めて、麻酔科で研鑽を積みました。
後期研修はいかがでしたか。
秦当時はまだ独身で、年齢も若かったですし、市場先生からも「2年間で2年以上のものを身につけて救急科に帰ってこい」と言われていたので、本当に仕事オンリーな感じでした。日が昇る前から病院に行き、日を見ることなく生活していたので、その2年間の生活は二度としたくないです(笑)。でも、いい2年間でしたし、医師人生の中でそのぐらい仕事に没頭する期間があったというのは今も自分の中での誇れる思い出になっています。
後期研修が終わって、救急科の仕事を始められたのですね。
秦初期研修のときに感じていたのとは違う責任感があり、大変でしたが、人にも恵まれました。女性の少ない職場でしたが、人間関係で困ることもなかったです。個人的な感覚ですが、女性が少ない職場だとかわいがってもらいやすいですし、仕事もしやすい気がします(笑)。
後期研修が終わって、医局に所属されたのですか。
秦私は全く医局に所属していないんです。広島大学を卒業して、広島市民病院で初期、後期の研修をして、そのまま広島市民病院に雇用していただいたので、フリーランスに近いですね。松江赤十字病院にも医局人事などではなく、フリーランスとして雇用していただき、救急科に勤務しています。
松江赤十字病院に来られた経緯をお聞かせください。
秦初期研修時代の同期と結婚したのですが、夫が松江市の出身なんです。いずれは松江市に帰りたいと言っていたので、一番上の子どもが小学生になるタイミングで帰ることに決めていて、そのプラン通りに帰ってきました。そして、松江市の病院の中で救急医ができるところを探し、当院に勤務することになりました。
松江赤十字病院での勤務はいかがですか。
秦広島市民病院は救急医が多く、上司や相談相手も大勢いたので、学年を重ねても下の立場で、自分の考え一つで動くというよりはチームの中で動くという感じでした。でも、当院に来てからはポジション的には下の方でも、人数が少ないので、自分で決断しないといけない場面が増えました。そういう意味では大変でもあり、遣り甲斐もありという勤務です。
松江赤十字病院の救急の特徴をお聞かせください。
秦松江医療圏の唯一の三次救急を担っています。松江市内には救急車を受け付ける病院は3つあるのですが、救急専門医の多さなどから、当院が最も多くの台数を受け入れています。これは日本赤十字社の病院全体の傾向ですが、「断らない」ことが当院の方針でもありますので、ベッドが一杯であっても、救急車が来ます。広島市民病院は地域の近隣病院との間で「この疾患は◯◯病院」のような棲み分けが自然にできていたので、症例の偏りみたいなものがありましたが、当院は様々な症例が集まります。そして、広島と比較すると、患者さんの年齢層が高いです。松江での勤務を始めた頃は90代後半や100歳と聞くと驚いていました。症例も年齢層も幅広く診ているのが特徴だと思います。
当直の回数はどのぐらいですか。
秦育児短時間勤務制度を利用しているので、救急外来での当直はしていません。月に1回だけ、ICUの夜間当直をしています。